遺産分割でもらった不動産を売ったときの「取得費加算の特例」
相続税を払って実家などの不動産を引き継いだ方が、その不動産を売却しようとするときに「相続税を払った上に、売却でも税金がかかるのか」と不安になるお話をよくうかがいます。実は、相続税を払った方には、その一部を売却時の税金の計算に反映できる制度があります。この記事では「取得費加算の特例」と呼ばれるこの制度の仕組みと、空き家の3,000万円特別控除との使い分けを整理します。
1. 「取得費加算の特例」とはどんな制度か
正式には「相続財産を譲渡した場合の取得費の特例」といいます。相続や遺贈で取得した不動産などを売却して利益が出た場合、支払った相続税額のうち一定の金額を、取得費(売却益を計算するときに差し引ける金額)に加算できる制度です。
取得費として差し引ける金額が増えるということは、その分だけ売却による利益(譲渡所得)が小さく計算され、税負担が軽くなるということです。
2. 対象になる人と期限
この特例を受けるための主な要件は次のとおりです。
- 相続または遺贈により財産を取得した人であること。
- その財産を取得した人に、相続税が課税されていること。相続税がかからなかった方(基礎控除の範囲内で申告不要だった方など)は、そもそもこの特例の対象になりません。
- その財産を、相続税の申告期限(相続の開始を知った日の翌日から10か月以内)の翌日から3年を経過する日までに売却していること。相続の開始を知った日を基準に、そこから申告期限までの10か月と、さらに3年を加えた「およそ3年10か月以内」が目安になります。
- この特例は自動的に適用されるものではなく、一定の書類を添えて確定申告をすることが必要です。
3. 「空き家特例」との違いと、併用できるかどうか
以前の記事で取り上げた「空き家の3,000万円特別控除」(以下、空き家特例)と、この取得費加算の特例は、どちらも相続した不動産を売るときの税負担を軽くする制度ですが、性質が異なります。
- 空き家特例:建築年(昭和56年5月31日以前)や、相続時から売却時まで空き家であったことなど、建物の条件が細かく決まっています。相続税を払っていない方でも使えます。控除額は最高3,000万円(2024年(令和6年)1月1日以後の売却で、その不動産を取得した相続人が3人以上いる場合は2,000万円)です。
- 取得費加算の特例:建物の築年数などの条件はありませんが、相続税を実際に払っていることが前提です。取得費に加算できる金額は、支払った相続税額に応じて変わります。
そして、同じ不動産の売却について、この2つの特例を同時に使うことはできません。国税庁の空き家特例の要件には、取得費加算の特例の適用を受けていないことが明記されており、いずれか一方を選んで適用することになります。
4. どちらを選べばよいかの考え方
- 相続税を払っていない、またはごくわずかな方は、要件が合えば空き家特例が有力な選択肢になります(取得費加算の特例は相続税を払っていることが前提のため対象外です)。
- マンションなど空き家特例の対象外の建物を売る方や、相続税を多く払った方は、取得費加算の特例の方が有利になることがあります。
- 両方の要件を満たす場合は、実際の税額を試算して比較する必要があります。取得費加算の特例で加算できる相続税額の計算は、譲渡した財産ごとに按分計算を行う仕組みになっており、加算できる金額はその譲渡による利益(譲渡益)の範囲が上限とされています。一般の方が正確に試算するのは簡単ではありません。
どちらが有利かは、相続税の申告内容や売却価格によってケースごとに異なりますので、個別の判断は税理士にご確認いただくことをおすすめします。
5. まずは相続税の申告内容を確認することから
取得費加算の特例を使えるかどうかは、相続税の申告で実際にいくら納めたか、申告期限がいつだったかによって決まります。まずは相続税の申告書控えを確認し、申告期限からの残り期間を把握することから始めましょう。相続登記が済んでいるかも、売却を進める前提として確認しておきたいポイントです。
特例が使えるかの最終的な判断や税額の計算、確定申告は税理士、相続登記は司法書士など、専門家をご紹介できます。当社では、売却をお考えの不動産の無料査定や仲介のご相談、あわせて相続に関するご相談も承っております。対応エリアは神奈川県・東京都・埼玉県・栃木県です(ヴィーナスリアルエステート株式会社/神奈川県知事(1)第31910号)。お問い合わせフォームにご記入いただければ、こちらから折り返しご連絡いたします。
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