空き家特例が「使えなかった」を防ぐ、売る前に知っておきたい3つの落とし穴
以前の記事「実家を売ったら税金が最大3,000万円控除される『空き家特例』」では、制度の仕組みと対象になる家の条件を整理しました。よく知られた制度ですが、実際には「条件は満たしているはずなのに、使えなかった」というケースも少なくありません。原因の多くは、制度そのものではなく、売り方・空き家になるまでの使い方・書類の残し方にあります。
この記事では、売却を始める前に知っておきたい3つの落とし穴を整理します。
1. 前提:特例を使うには、市区町村の「確認書」が必要
空き家特例は、確定申告のときに申告書を出すだけでは受けられません。事前に、家のある市区町村へ申請して「被相続人居住用家屋等確認書」を発行してもらい、それを申告書に添付する必要があります。
市区町村は、提出された書類をもとに「亡くなった方が一人で住んでいた家か」「相続してから売るまで、誰も住まず、貸さず、事業にも使っていないか」などを確認します。逆にいえば、実態として条件を満たしていても、それを書類で十分に示せなければ、確認書の交付を受けられないことがあります。ここが、この特例のいちばん難しいところです。
2. 落とし穴①:売り方・契約の形で対象外になる
- 特別な関係にある方への売却:親子や夫婦、生計を一にする親族、売却後にその家で同居する親族、内縁関係にある方、関係する法人などへ売った場合は対象外です。「身内に買ってもらえば話が早い」と考えがちですが、身内へ売る場合は、該当するかどうかを事前に税理士へご確認ください。
- 建物を残したまま「土地だけ」売る:2024年(令和6年)以後の売却では、古い家を残したまま売り、買主が売却した年の翌年2月15日までに取り壊すか耐震改修をする形でも対象になりました。ただしこの場合、建物も一緒に売ることが前提です。登記費用を抑えようと「建物は売主名義のまま、土地だけを買主に移す」形にすると、対象外になるおそれがあります。
- 契約書の書き方:買主が取り壊しや耐震改修をする形で売る場合、売買の対象に建物が含まれていること、買主が期限までに取り壊し・改修を行うことを、契約書にきちんと入れておくことが大切です。契約書の表題(「土地売買契約書」か「不動産売買契約書」か)ではなく、中身として建物を売っているかどうかが問われます。
- 信託など、相続以外の形で引き継いだ場合:特例の対象は、相続や遺贈で引き継いだ家と土地です。家族信託の契約で引き継ぐ形など、引き継ぎ方によっては対象外とされることがあります。生前対策で信託を検討している方は、この点もあわせて専門家に確認しておくと安心です。
3. 落とし穴②:空き家になるまでの「使い方」で対象外になる
特例の対象は、亡くなる直前にその方が一人で住んでいた家で、相続後は誰も住まず、貸さず、事業にも使っていないことが条件です。次のようなケースは対象外になります。
- ご夫婦そろって老人ホームに入居した:老人ホームへの入居で空き家になった場合も、一定の条件で対象になります。ただし、入居の直前にご本人以外の方(たとえば配偶者)も住んでいた場合は、条件を満たしません。
- 相続人が住んだ・貸した:相続後に相続人が住んだり、短期間でも人に貸したりすると対象外です。
- 空き部屋を民泊などに使った:事業に使ったことになり、対象外です。
また、老人ホームへの入居で空き家になった場合は、ご本人が要介護・要支援の認定などを受けていたこと、入居先が法律で定められた種類の施設であること、入居後も家が他の人に使われていなかったこと、などを示す書類が別に必要です。さらに、入居してから亡くなるまでの間も、家がご本人の家財の保管などに使われ続けていたことが求められます。
4. 落とし穴③:書類・記録が残っていない
市区町村への申請では、たとえば次のような書類で「空き家だったこと」を示します。
- 電気・水道・ガスの使用中止日(閉栓日・契約廃止日)が分かる書類
- 売却を依頼した(媒介契約を結んだ)不動産会社が「現況空き家」と表示して出した広告(取り壊す予定で売る場合は、その旨の表示も必要です)
- (老人ホーム入居の場合)介護保険の被保険者証、施設の入居契約書、施設が保管している外出・外泊の記録 など
※確認書の申請では、閉栓日・契約廃止日は相続が始まった日以降のものとされています。
ここで見落とされやすいのが、不動産会社の広告も証拠書類の一つになるという点です。売却を依頼するときは、広告に現況が正しく表示されているか、その広告を後から提出できる形で残しておけるかも確認しておきましょう。
あわせて、家の中の様子(家財が置かれている状態など)を撮影日が分かる形で写真に残しておくと、補足資料になり得ます。撮った写真は加工せず、元のデータのまま保存しておくのが安心です。なお、取り壊してから土地を売る場合は、更地の状態を撮影日入りで撮った写真が提出書類になります。
亡くなってから慌てて書類を集めようとしても、すでに解約済みで資料が取れない、施設の記録が残っていない、ということも起こり得ます。「空き家になった時点」から記録を残し始めるのが理想です。ただし、老人ホームに入居中の段階で電気・水道・ガスを解約したり家財を片付けたりすると、かえって要件を満たさなくなるおそれがあります。解約や片付けの時期は慎重に判断しましょう。
5. 期限も忘れずに
売却は、相続が始まってから3年を経過する日が属する年の12月31日までに行う必要があります。また、制度そのものも現行では2027年(令和9年)12月31日までの売却が対象です。2024年以後の売却では、その家と土地を相続で取得した人が3人以上いる場合、控除の上限が2,000万円になる点にも注意が必要です(相続人全体の人数ではありません。詳しくは前回の記事をご覧ください)。
書類集めや確認書の申請には時間がかかります。期限ぎりぎりになってから動くと、書類がそろわず間に合わない、ということにもなりかねません。
6. 売却を考え始めたら、まず「使えるかどうか」の確認から
空き家特例は、使えるかどうかで手元に残るお金が大きく変わる制度です。そして、使えるかどうかは売り出す前の準備に大きく左右されます。
当社では、無料査定や売却(仲介)のご相談はもちろん、相続全般のご相談も承っております。特例を前提にした売り方(建物ごと売るか、取り壊してから売るか)のご相談や、広告・契約書の内容についても、売却の段階から一緒に確認いたします。なお、特例が適用できるかの最終的な判断や税額の計算は、税理士にご確認いただく必要があります。控除額の計算や確定申告は税理士、市区町村への確認申請や書類の整理は行政書士、登記は司法書士など、多数の専門家ネットワークの中からご紹介できます。
対応エリアは神奈川県・東京都・埼玉県・栃木県です(ヴィーナスリアルエステート株式会社/神奈川県知事(1)第31910号)。「うちの実家は対象になるのか分からない」という段階でも構いませんので、お問い合わせフォームよりお気軽にご連絡ください。ご記入いただいた内容をもとに、こちらから折り返しご連絡いたします。
相続不動産のご相談は、行政書士監修のヴィーナスリアルエステートへ。